03 お互いの人生 of h3m

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デジタル時代の人やモノの距離感 ブログよりもややフォーマル、原稿にするには個人的なこと

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お互いの人生

友人のリチャードと、そのリチャードの友人と鎌倉に遊びにいった。ボクらが行くコースはいつも決まっていて、銭洗弁天で円やドルを洗い、大仏と並んで記念写真をとり、八幡宮にお参りをする。最後に竹寺に行き、入り口のオジさんに「ゴメン、ゴメン」と謝りながら走って夕日の差し込む竹林を眺める(報国寺、通称「竹寺」は16時には閉門してしまう)。毎年繰り返される友人との鎌倉ツアー。もう6、7回くらいは繰り返している。

ボクは一日だけ時間をあけて、夕食の食材や駐車代など、ほんの少しだけ負担をする。友人は、いつも帰り際に「こんなにしてくれて、ありがとう」というけれど、ボクは何かをしてあげたという気持ちはあまりない。

ボクは子供の頃に剣道を習っていて、高校のときは工業高校だったからか、体育ではときどき柔道の授業があった。今は合気道を習っている。父は柔道を熱心をやっていたらしいし、兄は少年の頃から大人になるまでズッと極真空手をやっていた。我が家は意外に武道一家だったのだ。

ほとんどの武道は、相手にかける技だけでなく受け身を大切にする。たぶん、みんな投げてばっかりいたいだろうけれど、相手の技を受けて自分が転がることも重要なこと。それでも、ボクは、稽古で高段者の人を投げるたりすると、少し申し訳なく思う(実際は、ボクのへなちょこな技に投げられてくれているのだけれど…)。ボクがそんな顔をしていると、高段者の人は「お互いの稽古なので」と清々しく言ったりして、カッコいい。

だからボクは友人から、観光のお礼に「ありがとう」なんて言われると、「お互いの人生だからね」と答える。いつも友人は「?」という顔をするけれど…。

前田知洋(まえだともひろ)
クロースアップ・マジシャン。1988年、東京電機大学工学部卒業。卒業研究論文は人工知能。100以上のテレビ番組に出演。海外での出演も多く、チャールズ皇太子もメンバーの英国マジックサークルのゴールドスターメンバー。「Hanako」(マガジンハウス)で人生相談、「ナンプレファン」(世界文化社)でコラム「日常の暗号」を連載。現在は建築誌「モダンリビング」(アシェット婦人画報社)でエッセイを連載中。主な著書に「知的な距離感」(かんき出版)、「人を動かす秘密の言葉」(日本実業社出版)など。公式サイトへのリンク

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