01 Take it easy Go with the flow of h3m

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デジタル時代の人やモノの距離感 ブログよりもややフォーマル、原稿にするには個人的なこと

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写真提供:ヴァージン・アトランティック航空

take it easy,go with the flow. #001

 ヴァージン・アトランティック航空の日本サイトに2月末までブログを書いている。ヴァージン・グループ会長、サー・リチャード・ブランソンは、英国そして世界で最も尊敬される事業家の一人。彼は学生向け政治誌の発行を手始めに、レコード盤の通信販売、レコード店経営、ミュージシャンのプロデュースと次々に手を広げ、84年に航空会社を設立。現在は300以上の会社を傘下に置き、30億ポンド(4千億円)の資産を築くに至った。
 ビジネスを立ち上げた初期の頃、親族から若干の援助を得たことはあったものの、友達の家のガレージで暮らしながら、無一文の状態からブランソン氏がここまで成し遂げることができたのは何故か。その秘密が知りたくて、遅ればせながら、ずっと前に買ったまま手つかずになっていた、彼の最初の自伝、Losing My Virginity(日本語訳タイトル『ヴァージン―僕は世界を変えていく』)を読んでみた。
 成功者とは人生の早い時期に自分の欠点や問題に気づき、それをポジティブな力に替えることができた人だと思うが、サー・リチャードも例外ではなかった。彼は文字の読み書きに困難を生じる学習障害、ディスレクシア(難読症)だった。それ故、学校ではスポーツや学内活動で力を発揮するとともに、既存の制度に対する反骨精神に目覚めた。
 安心して帰る場所がなければ、人は冒険などできないが、サー・リチャードには絶対的安らぎを与えてくれる両親がいた。彼は英語でいうところの”unconditional love”(無条件の愛)を得た。両親はたとえ彼がどんな間違いを犯しても彼を支持した。悪いところを批判せず、常に良いところを見つけて褒めた。だから、サー・リチャードは自分の失敗や過ちを認めるのを躊躇ったことがないという。両親に自分の悩みを言えない友達が沢山いることを知った彼は、17歳の時に学生相談センターを設立している。
 お金を儲けることが目的だったら、ここまでできなかった、とサー・リチャードは言う。彼のビジネスの根底にあるのは既存のシステムの改善。それを実行したら、いつのまにか300以上の会社ができてしまったともいえる。ヴァージンは敢えて大手が支配する業種に参入し、違うものが提供できることをアピールした。また、壁にぶち当たった時は、縮小ではなく、常に拡大することで乗り越えてきた。
 自伝にはプライベートなことも赤裸々に書かれているが、成功してもヒッピー精神を失わず、正直なところが支持されているのだ。
 筆者は何年も前、日本のテレビ番組の撮影に立ち会い、サー・リチャードのロンドンの自宅を訪問したことがある。撮影後、彼が「今夜、僕の会社のパーティがあるんだけど、皆、来ないか?」と全員に声をかけてくれたが、ディレクターが全く興味を示さず、不参加になった。
 サー・リチャード・ブランソンからパーティに招待されるなんて、そう滅多にあるものではない。日本人はこれが苦手かもしれないが、目的達成と同じぐらい、そのプロセスを楽しむのも重要なのではないか。サー・リチャードも、まるで趣味の気球やカイト・サーフィンなどの冒険に挑戦するのと同じように、事業の荒波を乗り越えることを楽しんでいる。筆者も身を以て体験しているが、新しい可能性やチャンスは、一見、無駄とか遠回りに思えるようなきっかけや出逢いから始まっている。しかも運命は一瞬で決まる。サー・リチャードも会って30秒でその人と仕事するかどうか決めるそうだ。人生は旅と同じ。通り過ぎる風景や何気ない出逢いにその醍醐味がある。
 だから、take it easy, go with the flow.

RICA
在英11年。ヴァージン・アトランティック航空のサイトに『RICAのロンドン日記 私の好きなイギリス』と題してブログを執筆中。また、2月5日発売予定のキネマ旬報決算特別号に『2010年英国映画界事情』を寄稿
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