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デジタル時代の人やモノの距離感 ブログよりもややフォーマル、原稿にするには個人的なこと

家を買ったら幸せになれるか?

「購買意欲」は伝染する

友人が家を買った。正確に言うと土地を買ってそこに家を建てるらしい。僕は、他人にライバル心を持つほうではないし、どちらかというと他の人がすることの反対をいくタイプ。ところが、楽しそうに家の間取りや建築材料を選ぶ友人を見ていたら、「持ち家も悪くない」と少しずつ思うようになった。デパートの歳末セールなどを考えれば明らかなように、購買意欲は伝染する。実際、僕が家の購入を決めたとたん、僕の周りでもバタバタと家を買う人が増えた。おそらく、「アイツに買えるなら、オレにも買えるだろう」という思いもあったのかもしれない。

魅力的な物件をみつけてペーパーワークはイキオイで乗り切る

自分の気に入った物件は時間をかけて慎重に探す。かたや「これぞ!」と思う場所があったら、即断即決する力も必要になる。運もあると思うけれど、親身になってくれる建築家や大工など、家のプロと一緒に見て回れば、不良物件をつかまされるなどのリスクは少なくなる。どうしても手に入れたい物件を見つけたら、手付けを払う。あとは住宅ローンの審査などの山のような書類は、家を買うアドレナリンが体内に充満しているあいだ、イキオイで乗り切るだけだ。

手に入れて終わりじゃない

ローン審査も通って売買契約書に判を押し、工事も終わって家を手に入れ、スゴロクでいう上がり(RPG/ロールプレイング・ゲームで例えるならラストのボスを倒した)と思ってはいけない。使いやすくて暫くは故障しない電化製品や、一生を共にしてもいいと思えるイスや机などの家具も探す必要がある。台風が来たら雨漏りをチェックし、夏が終われば庭の雑草を抜く。子供やペットが新しい壁紙を破れば張り替える。家を買ってメデタシ、メデタシというわけじゃない。映画「ロード・オブ・ザ・リング」でも、指輪を捨て、敵を倒した後の話がけっこう長い。

僕の失敗は、家の一番の部屋を友人と一緒に過ごせるリンビングをしたこと。住んでしばらくしてから、招くような友人があまり僕にはいないことに気がついた。不思議なことに、リビングを作ったことによって、少しずつでも友人が増え始めたような気がする。

人間が家を手に入れることは、動物が巣を作ることに似ている。雨水や外敵が侵入しないように注意を払い、風が吹いて壊れれば修復をする。平穏な場所を選んで、周囲と調和して安心して暮らす。きわめてアナログな行為だと思う。
鳥が巣を作り、卵を孵す光景を眺めたことがある人なら知っているだろうけど、親鳥はけっこう忙しい。巣の材料になるワラやヒモを集め、エサをとり、巣に雨がかからないように葉や枝を調整する。他の動物が近づけば、羽を広げてヒナを守り、息をひそめて災難が過ぎ去るのを待つ。

もちろん経済的に余裕がある人なら、そのすべて(セキュリティや修繕、ガーデニングなど)を他人任せにすることもできる。けれども、そんな「一番楽しいところ」を自分でやらないなんて、僕には少し信じられない。大げさかもしれないが、「生きる」行為の中で「住む」という要素はとても大きな部分を占めていると思う。だからこそ、どんな些細なことも自分で選択していきたい。表題の「家を買ったら幸せになれるか?」の答えは「面倒くさいことがやたらに増えるけれど、幸せといえば、幸せ」ということになるのかもしれない。少なくとも僕はそう思っている。

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