フィジカルリリース ロンドン編 下
前回までの話
まずは、ひたすら歩く
やっとロンドンに到着。いつもは、外国の空港につくと疲労困憊するのだけれど、何故か今回はあまり疲れもたまっていない。だから、疲れを溜めるために街をひたすら歩き回る。写真ギャラリーとか、古本屋とか、画材屋などを探検。ロンドンの古本屋さんは売り場の面積も広くて、フロアも複数あるから、本を選んで買うというよりも探検に近い。僕が行った古本屋は地下に古い印刷物(新聞記事や古い雑誌のイラストなど)ばかりが置いてあった。数点購入。画材屋は購入した写真や印刷物を折れないように日本に持ち帰るための入れ物を買った。この入れ物、いつも名前を忘れてしまうので、「画用紙のないスケッチブックみたいなヤツ」というとすぐに理解して、「ああ、アレね」と画材屋のオジさんは出してくれる。だから、いつまでも名前が覚えられない。ホテルに戻って「ああ、疲れた」と荷物を置く。
ホテルの人に聞くと「reflexology(リフレクソロジー)をさがすなら、Piccadilly Circus(ピカデリーサーカス)がいいよ」と教えてくれた。ピカデリーサーカスはウエストミンスターにある広場のこと。歩いて5分くらいのところに、中華街がある。きっとそっちだと思って歩いていくと、「マッサージ」と書かれた看板がたくさんある。
表通りの店よりも裏通りのほうが立地が悪いぶん腕もいいしリーズナブルなはず、と勝手に決めつけて一本裏に小さなサインを発見。扉を開けると一階は漢方薬の薬局になっていて、リフレクソロジーは地下だと案内された。細い階段をおりていく。
日本と海外のマッサージが明らかに違うのは、ほとんどのマッサージが個室でおこなわれること。リラックスのためか、プライバシーの問題なのか、わからない。そういえば、ヘアサロンも個室が多いから、きっとその両方なのかもしれない。もう一つ、日本と違うことはチップを渡すこと、僕は料金の20%ほどをガイドラインにしている。
きっと正しいマナーではないのかもしれないけれど、僕はいつもチップを先に払う。相手に「この客は、チップをくれるのだろうか…」と「このモミ加減だとチップはこれくらいかなぁ…」なんて双方不安に思いながら治療を受けるのがイヤだからだ。
そんな心配性だから、肩がコルのかもしれないが、リフレクソロジーがはじまる。ソフト、スゴくソフト。一階が漢方薬の薬局だったから「刺激的かも…」と思っていたが、ほとんど痛くない。少し話を聞くと、1階で漢方薬を処方しているのはお父さんとお母さんで、リフレクソロジー担当しているのはお嬢さんらしい。
「ファミリービジネスなんです…」と彼女は笑うけれど、これはジョーク。英語で"Family business"というのは、ビジネスシーンで創業者一族が経営陣が支配権を握っていることで、海外の自由経済マーケットではネガティブな表現に使われる。そのジョークは別にして、家族が同じところで働いているなんて、ちょっと素敵かも。優しいリフレクソロジーだったけれど、終わったら身も心もすっきりした。
英語で「優しい」を意味する"gentle"は、"gentleman(ジェントルマン、紳士)の語源になっている。さすがレディとジェントルマンの国らしい、優しいリフレクソロジーだった。というわけで、日本の英国式リフレクソロジーは、意外にも本当に英国式だった。(ロンドン編おわり)
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