h3m Report , Distance of Art 2
「アートの距離」 金継ぎ 黒田ゆきこ
マジックの世界では、切れたロープを復元させたり、美女の胴を切って元に戻したりする。
「元に戻すのなら、最初から切らなければいいのに…」なんて、若く、生意気な僕は思っていた。とこ
ろが、そんなマジックは観客にとてもウケがいい。シャーマン(呪術師)のいた時代から、復元のマジ
ックは、治癒や復活の象徴だったからだ。
黒田ゆきこさんは、マジックではなく「金継ぎ」で器を直す。金継ぎは、伝統的な修理技術。漆で破
片をつなぎ、金粉や銀粉などで仕上げる。独特の継いだ跡が美しく残るのが金継ぎの特徴だ。
「古い物は人の手を渡って歴史がある。良いもの選んで大切に使う。必要があれば修理をする。そんな
ライフスタイルが人間にとってちょうど良かったのかもしれない」という黒田さんの言葉も、この時代
に聞くと説得力が増す。
もしかすると、黒田さんは、現代のシャーマンなのかもしれないと思い始めた。自然から生まれた材
料を調合し、伝統的な技法で器を復活させる。
黒田ゆきこ(くろだ ゆきこ)
静岡県生まれ。器の修理人。グラフィックデザインの仕事を経て、金継ぎや布を用いたデザインを行う。実生活では食文
化の探求、実践の日々をすごす。
公式サイトへのリンク
h3m report , Distance of Art 01 アートとの距離「銅版画家 山田奈乙介」
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